糖尿病の症状は、すぐに現れません。
全身の血管に悪影響を与えるとても注意しなければならない病気です。
厚生労働省の調査では、成人のおよそ6人に1人が糖尿病または、糖尿病予備軍だと推測しています。
糖尿病の診断は、「空腹時血糖値」「ブドウ糖負荷後2時間値」などで診断が行われます。
それぞれの正常値と糖尿病にあたる値は、次のとおりです。
空腹時血糖値・・・110mg/dlは「正常型」、126mg/dl以上は「糖尿病型」です。
ブドウ糖負荷後2時間値・・・140mg/dlは「正常型」、200mg/dl以上は「糖尿病型」です。
「正常値」と「糖尿病型」の間を「境界型」といいます。
この「境界型」に当る人が「糖尿病予備軍」です。
また、糖尿病が原因となって起こる合併症は、次のようなものです。
<細い血管に起こる合併症>
主な合併症は、「神経障害」「網膜症」「腎症」で、糖尿病の3大合併症ともいわれています。
<太い血管に起こる合併症>
主な合併症は、「動脈硬化」で、さらに進行して「心筋梗塞」「脳卒中」などの病気を引き起こすこともあります。
動脈硬化は、早いうちから糖尿病の合併症として起こることがわかっています。
糖尿病の人が心筋梗塞などを起こす危険性は、2?3倍も高いとされています。
高血糖によって「活性酸素」が作られます。
この活性酸素は、血管壁の内側を刺激します。
そして、血管壁にコレステロールなどを沈着させやすくします。
その結果、血管壁は、厚く硬くなります。
このように動脈硬化は進行していきます。
また、心筋梗塞や脳卒中など血管に起こる合併症は、糖尿病になる前から危険性が高まることがわかっています。
そのため、糖尿病になる前の予備軍の段階からきちんとした対策をとることが大切です。
動脈硬化を起こす原因は、「高血圧」「高脂血症」「肥満」「喫煙」などがあります。
特に「高血糖」「高血圧」が合併すると動脈硬化の進行が早くなります。
動脈硬化の予防のために、次のようなポイントを守り、生活習慣を改善することをおすすめします。
<全身運動を1日合計30分間行います>
体を良く動かすと、糖を消費しやすくなります。
また、体質も改善されて、脂肪が燃焼しやすくなり、肥満解消につながります。
そして、血圧も下げる効果ももちろんあります。
<脂質を控えて、禁煙します>
脂質を摂り過ぎることも、動脈硬化を引き起こす原因になります。
煙草も血管を収縮させるため、動脈硬化を引き起こす原因にもなります。
<食後の血糖値上昇を抑制します>
健康な人でもみんな食後は、血糖値が上昇します。
この血糖値の上昇の上がり幅が小さければ、血管の負担が軽いということです。
食事の始めに食物繊維などの消化されにくい食品をたくさん摂ることで、食後の血糖値の上昇を緩やかになります。
主食のおすすめは、「玄米ごはん」です。
甘いものを食べたいときは、摂り過ぎには注意して、食後に摂るようにします。
神経障害の症状は、障害を受ける神経によって違いがあります。
それぞれ、主な神経障害の症状は、次のようなものです。
感覚神経・・・「痺れ」「灼熱感」などの異常感覚が現れ、感覚が鈍ってきます。
自律神経・・・「便秘」「下痢」「発汗異常」「立ちくらみ」「勃起障害」などが症状として現れます。
運動神経・・・「筋力低下」「筋萎縮」などが起こります。
糖尿病以外の病気が疑われる症状もたくさんあります。
しかし、糖尿病独特の神経障害が「異常感覚」です。
異常感覚は、早期の段階から現れます。
また、長い神経を持つ脚のほうから現れることが多いです。
他の特徴は、左右両方に起こります。
感覚神経の障害が進行すると次のような段階を進んでいきます。
<無症状期>
自覚症状がありません。
検査によって神経障害を見つけることができます。
<前期>
つま先や足の裏に症状が現れます。
具体的には、「痺れ」「灼熱感」などの異常感覚と「ピリピリ」とした痛みです。
<中期>
異常感覚の範囲が膝上や指先にも広がります。
<後期>
神経線維が変形することで、痛みなどを感じなくなっていきます。
これは、神経障害が進行したということです。
たとえば、感覚鈍っているため足に傷を負っていたとしても気づかず、壊疽が起こり最悪の場合下肢を切断しなくてはならなくなることもあります。
神経障害は、中期ほどであれば改善が期待できます。
しかし、後期まで進行してしまうと神経線維が変形したり、脱落が起こるため、回復は困難です。
神経障害の検査には、「アキレス腱反射検査」と「振動覚検査」があります。
アキレス腱反射検査とは、専用の器具を用いて、アキレス腱を叩き、反応をチェックします。
振動覚検査とは、専用の器具の振動をどの程度の間感じているかをチェックします。
これらの検査によって、神経障害が発見されます。
早期に対処するほど、改善しやすいです。
そのため、糖尿病の人は自覚症状がなくても、積極的に検査することをおすすめします。
また、神経障害の治療の基本は、「血糖の調整」をすることです。
全身運動、食事療法、禁煙、薬物療法などがあります。
神経障害の薬物療法は、一般的に血液循環を良くする薬を使用します。
しかし、全身運動をすることでも血液循環を良くすることができます。
さらに、糖が筋肉に取り込まれるので、血糖の管理にもとても期待できます。
その全身運動とは、具体的に何かというと、「ウォーキング」「水中運動」などの有酸素運動です。
がんばりすぎて腰や脚の関節を痛めないように注意することも大切です。
いきなり症状が改善することはありませんが、根気よく治療することで少しずつ回復していきます。
糖尿病の合併症はいろいろありますが、初期に起こるのがこの神経障害です。
神経障害を予防することで、「網膜症」「腎症」の予防にもつながります。
成人の視覚障害の第1位の原因は、糖尿病による網膜症です。
網膜症は、自覚症状が特になく、初期の段階では視力低下なども現れないので、発見が遅れがちになります。
そのため、視覚障害にまで進行してしまう人がたくさんいます。
網膜症は、糖尿病発症から5年以上の人の15?20%に現れます。
20年以上では、60%の人に現れ、そのうちの15%の人は視覚障害を起こす危険性があるくらいにまで進行します。
網膜は、目の奥のほうにあります。
カメラのフィルムのような役割があり、外からの光を像として映します。
そして、網膜には、酸素などを運ぶ毛細血管がまとまっています。
なぜ、網膜症を起こるかというと、糖尿病によって血液中の糖が増加して、網膜の毛細血管を傷つけ、弱くなったり詰まったりして、出血などを起こします。
網膜症は、進行の症状を3つの段階に分けることができます。
その3つの段階に合わせた治療が行われています。
<単純網膜症>
網膜症の初期の段階です。
網膜の毛細血管が弱くなり、血管に小さなコブができます。
このコブが破けると「点状出血」が起こります。
そして出血が吸収されると、網膜に硬い白斑ができます。
視力と関係している「黄斑部」に影響がないときは、自覚症状は特にありません。
主な治療は、生活習慣を改善して、血糖を調整します。
<増殖前網膜症>
毛細血管の内部の空間が狭くなって詰まったりすると、血流が悪くなり、血液の成分が血管壁の外側に染み出したりします。
そして、神経がむくむことによって、軟らかい白斑ができます。
多くは、黄斑部以外に起こるため、ほとんど自覚症状はありません。
治療は、血糖を調整とレーザー治療です。
<増殖網膜症>
毛細血管が詰まることで血液が流れず、網膜の酸素や栄養が不足します。
それを、補助するために新しい血管「新生血管」が生えます。
しかし、この新生血管は、とてももろいのでわずかな衝撃でも破れて出血を起こします。
この出血が硝子体にまで影響を与えると、視力が低下してしまいます。
その場合は、硝子体手術によって出血を取り除きます。
さらに、網膜剥離を起こす危険性もあり、最悪の場合失明してしまいます。
糖尿病の人は、視力低下や視覚障害の予防のためにも定期的に眼科を受診することをおすすめします。
「網膜症」の発症や進行を予防するためには、血糖を厳しく調整することが大切です。
その値が「HbA1c」です。
「HbA1c」とは、ヘモグロビンエーワンシーといい、赤血球のヘモグロビンに糖が結びついたものの一種です。
アメリカで試験が行われた結果によると、HbA1cの値が低い群のほうが網膜症の発症率が低いと分かりました。
ですから、血糖をきちんと調整することで、網膜症の予防ができるのです。
また、空腹時と食後の血糖値の差も小さくすることも必要なことです。
健康の人の血糖値は、空腹時およそ70?100mg/dl、食後140mg/dl以下です。
しかし、空腹時は正常範囲、食後は200mg/dl超など血糖値の差が大きい場合は、網膜血管が障害を受けます。
そのため、網膜症が進行しやすくなります。
かなり進行した網膜症を薬物療法で治療した場合、急激に血糖値が下がりすぎたりすると、出血の恐れがあります。
血糖を調整するには、こまめに体を動かすことです。
日常の生活の中で、階段を利用するなど体を積極的に動かすことで、糖が消費されやすくなります。
網膜症の原因が糖尿病なので、糖尿病自体を改善することが大切なのです。
糖尿病が原因で起こる合併症の1つが「腎症」です。
腎臓の病気になり、「人工透析」を受ける人が年々増加していて、新たに人工透析を始める人は、日本では1年間で3万人以上です。
腎症を発症するまでの期間は、個人によって大きく違います。
血糖と血圧の調整によって、糖尿病になってから5年の人もいれば、20年経ってからなる人もいます。
なぜ、糖尿病によって腎症を引き起こすかというと、血糖の高い状態が長く続くことで腎臓の働きに悪影響を与えます。
腎臓は左右にあり、毛細血管がまとまった「糸球体」がおよそ100万個ずつあり、老廃物を取り除き血液をきれいにしています。
この血液をきれいにする働きが低下すると、塩分の排出が弱くなり、血圧が上昇しがちになります。
そして、悪影響を受けていなかった糸球体に負担をかけてしまうことになります。
この状態が循環することで腎症を悪化させていくのです。
腎症は、進行の症状を3つの段階に分けることができます。
その3つの段階に合わせた治療が行われています。
<早期腎症期>
尿の中にたんぱく質(アルブミン)がわずかですが、出てきます。
自覚症状は、ほとんどありません。
そのため、一般的な尿検査では発見することはできません。
この早期腎症期の治療は、生活習慣を改善して、血圧や血糖を調整していきます。
<顕性腎症期>
尿の中にたんぱく質が出てきます。
症状が進行すると、脚などがむくむことがあります。
この顕性腎症期の治療は、生活習慣の改善と降圧薬を使用して血圧を調整します。
また、食事を見直してたんぱく質の摂取制限もします。
<腎不全期>
腎臓の機能がひどく低下しています。
本来、腎臓で行われる働きができず、老廃物が体内にたまり「尿毒症」を起こします。
尿毒症になるといろいろな症状を引き起こし、命にかかわることもあります。
腎不全期になると、腎症の進行を止めることは、とても難しいです。
腎不全の場合、腎機能が回復することは期待できません。
腎不全期からさらに進行すると「透析期」になり、「人工透析」による治療を受けなければなりません。
顕性腎症期の前期までにしっかりとした治療を行えば、腎機能を改善することもできます。
腎症の発症や進行を予防するためには、次のことを注意することが大切です。
<血糖値を「HbA1c7%未満」に保つ>
HbA1c7%未満の糖尿病の人の腎症の発症率を1とすると、7?9%未満の人は2.6に増えます。
さらに9%以上の人は、4.2にまで増えます。
きちんと血糖を調節して、HbA1c7%未満に維持することが大切です。
<血圧は「130/80mmHg未満」に保つ>
最高血圧が130mmHg未満の糖尿病の人の腎症の発症率を1とすると、130?140mmHg未満の人は、2.3に増えます。
さらに140mmHg以上の人は、2.7にまで増えます。
130mmHg未満に保っていると、尿たんぱく質が減少したり、腎症の進行が止まる場合が多いです。
血圧の調整は、腎症の進行を予防するためにとても大切です・
また、尿たんぱくが1日1g以上出ている人は、血圧「125/75mmHg未満」に保つようにします。
しかし、糖尿病の人は血圧が上がりやすいので、血圧の管理が難しいかもしれません。
血圧を調整するにあたって、生活習慣を改善するポイントは次のようなものです。
<全身運動を1日合計30分間行います>
体を良く動かすと、糖を消費しやすくなります。
また、体質も改善されて、脂肪が燃焼しやすくなり、肥満解消につながります。
そして、血圧も下げる効果ももちろんあります。
しかし、腎症以外に合併症を起こしている場合もあるので、担当医師に相談した上で運動を開始します。
<食塩とたんぱく質の摂取を控えます>
食塩を摂り過ぎと、血圧を上げる原因になります。
また、たんぱく質を食事でたくさん摂取すると腎臓に負担をかけることになります。
<降圧薬を使います>
降圧薬をきちんと服用して血圧を調整します。
腎症の治療にとても効果的な薬は、「ACE阻害薬」「ARB(アンジオテンシン?受容体拮抗薬)」です。
全身の血圧を下げる以外に、特に糸球体の内部の圧力を下げて、腎臓を守る作用があります。
<禁煙>
喫煙をすると血圧を上げてしまう原因になります。
<ストレスをためないようにします>
ストレスが原因でも血圧は上がります。
そのため、自分なりのストレス解消法を見つけ、ストレス解消するように心がけることが大切です。